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新築の家を建てるという工程において、『引き渡し』は集大成となります。長い期間をかけて計画、工事を進めてきた住宅が、ついに自分の家になる瞬間。
しかし、この『引き渡し』という工程は、単に『鍵をもらったら終わり』というものではありません。むしろ、最も多くのトラブルが発生しやすいのがこのタイミングと言っても過言ではないでしょう。
引き渡しの前後には、書類や手続き、費用の支払い、各種チェックなど、細かい作業がたくさんあり、1つの見落としが新居での生活開始後のストレスや追加費用につながることがあります。
私自身も初めての注文住宅での家づくりで、慣れない作業やわからないことばかり。不安に感じることがたくさんありました。
この記事では、引き渡しの際の流れや準備が必要なことについて解説していきます。引き渡しに関する知識を網羅的に整理することで、初めて新築を建てる人の不安をなくし、後悔やトラブルを避けられるようになります。
理想の家づくり実現に向けて、ぜひ参考にしてください。
新築の引き渡し前にやるべきこと

まずは、引き渡しの前準備としてやるべきことについて解説します。
引き渡し日を決定する
引き渡し日を決める作業は、とても重要です。いつでも大丈夫と安易に考えてしまうと、後に大きな影響が出る可能性もありますので、しっかり検討しましょう。
引き渡しは、以下のような一連の流れの上に成り立っています。
- 住宅ローンの実行
- 残金の支払い
- 登記
- 鍵の受領
施主の都合だけでなく、銀行・司法書士・施工会社のスケジュールが揃う日でなければ、引き渡しは成立しません。
工事の進捗状況にも注意をしなければいけません。追加工事や天候による遅れが発生する場合もあるため、多少の余裕を持って日程を決める必要があります。
引き渡し日決定時の重要ポイント
- 銀行のローン実行日と連動するため金融機関との調整は最優先
- 司法書士が不在だと登記手続きができず延期になる
- 追加工事が発生している場合は、完了見込みも含めて判断する
- 六曜(大安・仏滅)を気にする場合、日程が集中し混み合う可能性もある
日程が決まったら、スケジュール表を作成し、引越しやライフライン開通などの準備に取り掛かると良いでしょう。

住宅ローンの実行や残金の支払いなどは、平日になる場合がほとんど。引き渡し日から逆算してどこかで平日に休みをとる必要があるから、仕事のスケジュールもある程度早めに合わせておく必要があるよ。
必要書類や費用を準備する
引き渡しをするためには、驚くほど多くの書類を準備しなければいけません。また、想像以上に費用が発生するケースも少なくありません。
必要なものが足りなくて、その場で手続きが止まってしまうようなトラブルは避けたいです。スムーズに手続きを進めるためには、事前準備が鍵となります。引き渡し当日やその前後の手続きで必要な書類は次の通りです。
必要な書類
- 住民票(新住所のものが必要な場合もある)
- 印鑑証明書
- 実印
- 銀行への提出書類一式
- 火災保険契約書類
- 登記に必要な書類(司法書士に渡すもの)
火災保険に加入していないと、ローンの実行ができません。引渡しよりも前に必ず契約を済ませておくようにしましょう。

私たちは火災保険のことをすっかり忘れていて、結構ギリギリで契約。時間に余裕がなくてあまり複数社を比較して吟味することができなかったからみんなは気をつけてね。
引渡しの際には、以下の費用を支払うことが一般的です。
発生する主な費用
- 住宅ローン事務手数料
- 保証料(金融機関による)
- 司法書士報酬
- 固定資産税・都市計画税の精算金
- 火災保険料
- 残金支払い
特に固定資産税の精算金は、購入時期によっては数万円〜10万円以上になることもあります。さらに多くの施主が見落としがちなのが、家具・家電やカーテン・アンテナなどの建物本体以外にかかる必須の費用です。

この時に発生する費用は、工務店などの見積もりの『諸費用』に分類される費用だね。これらの予算をしっかり確保されているかどうかによって、土壇場で焦る事にもなりかねないから注意してね。
注意ポイント
ATMの限度額では支払えない金額が必要になる可能性もあるので、振り込み予約や現金を引き出しておくなど、事前に準備を済ませておく必要があります。
引越しの計画を立てる
引渡しと引越しは同日での実施が難しい場合が多いです。1日に詰め込みすぎないよう、余裕をもって日程を組むことをおすすめします。
新築の場合、設備説明や最終チェックを行わずに引っ越しをしてしまうと、トラブルの原因となる可能性があります。また、それを認めてくれるようなハウスメーカーはほとんど無いでしょう。

引渡し前の家に、事前に購入した家具や家電を搬入することも認めてもらえないよ。家具などを買う際は、引渡し前に届くようにしないでね!ただし、ハウスメーカーで購入してもらった家具などは事前に設置までしてもらえる。自分で買った方が安くなる場合がほとんどだから、費用とタイミング、手間のバランスを見て決めよう。
引っ越し計画で最も重要なのは、新居に確実に運び込めるかどうかを事前に確認することです。冷蔵庫や洗濯機などの大型家電が搬入できないというトラブルはよくあります。階段幅や玄関幅のチェックは必ずしてください。
さらに、照明器具やカーテンなどの生活必需品が揃っていないと、新居での生活が非常に不便になります。引渡し後、すぐに住み始める場合は計画的に進めるようにしましょう。
賃貸物件の退去手続きを行う
現在賃貸に住んでいる場合は、退去手続きのタイミングも重要です。多くの賃貸物件では、退去日の1〜2ヶ月前の連絡が必要となっています。
引渡しが遅れた場合、賃貸の賃料と住宅ローンの両方の支払いが必要となる状態になってしまう可能性があります。また、原状回復費用の精算も必要になるので、退去前に不具合がないか確認しておくと安心です。
特に引き渡しが予定より遅れた場合、引越し業者やライフラインの契約をすべて変更しなければならないこともあり、手間やコストがかかります。
新築の引き渡し当日の流れ

続いて、新築の引き渡し当日の流れについて解説します。間際になってバタバタしないように、大まかな流れを掴んでおきましょう。
銀行での手続きと残金支払い
引き渡し当日の午前中、最初に行うことが多いのが銀行での決済手続きです。
- 住宅ローンの実行
- 売主(ハウスメーカー・工務店)への残金支払い
- 登記費用の精算
銀行ではこのような手続きが行われます。これら一連の手続きには、1〜2時間ほどの時間がかかります。数十枚の書類に署名、捺印をするので、精神的にも体力的にも負担がかかる事になるでしょう。

同じような書類に何度もサインをしたり印鑑を押すことになるよ。ほとんどの人がこれほどの量の書類に印鑑を押すような経験は初めてだと思う。少し緊張もあるし、疲れちゃうかも。
ネット銀行の場合、この流れがオンラインで行われるため、金融機関によっては手続きの順番が異なることもあります。
銀行手続きでの注意点
- 書類への押印が非常に多いため、印鑑が欠けていないか事前に確認する
- 忘れ物があると手続きが一度止まる
- ローンの振込時間によって引き渡しが遅れることもある
重要書類を受け取る
引き渡しの際には、とても多くの書類を受け取ります。これらは、今後の新居での暮らしにおいてとても大切なものです。代表的なものは以下のような書類です。
- 住宅設備の保証書
- 各設備の取扱説明書
- メンテナンススケジュール
- 検査済証・建築確認済証
- 図面一式(平面図・配管図・構造図など)
これらの書類は、将来不具合が発生した際や、リフォームの際にも必要になります。大切に保管してください。

最近では、一部の書類を電子データで渡してくれるメーカーも増えてきているみたい。紛失のリスクも減るし、書類がかさばることもないから助かるね。
建物の最終チェックをする
建物の最終チェックは最も重要な工程の一つです。万が一不具合があっても、引き渡し後に見つかった場合は『生活傷』との判別が難しく、最悪補修が有料になってしまう可能性もあります。
- 建具の開閉
- クロスの浮き
- 床の傷
- 水漏れ
- 照明やスイッチの動作
- 外壁の汚れ
この様にチェックすべき項目は沢山あり、細かく確認しなければいけません。メーカーの担当者と一緒に確認し、気づいた点はその場でメモや写真に残し、補修リスト(是正リスト)としてまとめてもらいます。

どんな小さなことでも遠慮してはダメだよ。気になることはしっかり指摘しよう。優良なメーカーを選んでいれば、真摯に対応してくれるよ。
設備や機器の説明を受ける
設備説明では、実際にその場で操作しながら確認することが大切です。
説明を受ける住宅設備の例
- キッチン設備
- 24時間換気システム
- 給湯器の設定
- 床暖房
- スマート家電連動のアプリ設定
このように、説明を受ける項目は沢山あります。聞いているだけでは覚えきれない場合は、説明を録音させてもらうなどすると、後から見返す際にとても役に立ちます。

新築で家を建てると、今までの賃貸にはなかった設備や、最新の設備など、初めて見るような設備も沢山ある。すぐに新居での生活に慣れるためにもしっかり説明を聞いておこう。
鍵を受け取る
最後に鍵を受け取ることで、正式に所有者としての権利が確定します。特に工事用キーが無効化されているかどうか、スマートキーであればアプリ設定が正常にできているかを確認しましょう。

鍵を受け取ったらいよいよ新居での生活がスタートするよ!楽しみだね!
新築の引き渡し後にやるべきこと

引き渡しが終われば、ようやく夢のマイホームが手に入ります。しかし、新居での生活をスタートさせるためにはまだやらなければいけないことが沢山。ここでは、引き渡し後にやるべきことについて解説します。
引越し
引っ越し当日は、家具や家電を運び入れる際に新居に傷をつけないよう、しっかりと養生をすることが大切です。引っ越し業者を使う場合は当然配慮してくれますが、自分で搬入するものがある場合は、十分注意するようにしてください。
今後長く続く新居での生活において、ご近所との関係はとても重要です。引っ越し当日、または翌日には挨拶をしておくことで、良い印象を持ってもらう事に繋がります。
ライフラインの手続き
生活に必須なライフラインには以下のようなものがあります。
- 電気
- ガス(開栓立ち会いが必要)
- 水道
- インターネット回線
これらをスムーズに開通させるためには、引っ越し前から予約しておく必要があります。特にインターネット回線を引く場合は、工事日が1ヶ月先になることもあるので注意が必要です。すぐにインターネットを使いたい場合は、余裕を持って準備するようにしましょう。
役所での手続き
住所変更や各種手続きも忘れずに行いましょう。
- 転入届
- マイナンバーカード
- 児童手当
- 車庫証明
- 固定資産税の減税申請(該当する場合)
引っ越し後は多くの作業で慌ただしくなります。役所での手続きは平日しかできない場合がほとんど。人によっては、仕事を休む必要もあります。
休みがあまり取れないような場合は、なるべく1日で全ての手続きが終わるように効率的にスケジュールを組んでおくと安心です。
新築の引き渡し時によくあるトラブル

引き渡しの際にはどのようなトラブルが起こりえるのでしょうか。ここでは、新築の引き渡しの際にどんなトラブルがよく起こるのか、深掘りしていきます。
引き渡しの遅れ
場合によっては、引き渡しが遅れてしまうことがあります。遅れの原因として代表的なのが以下になります。
- 天候(雨・台風)
- 資材不足
- 作業員不足
- 追加工事の発生
- 住宅ローン手続きの遅れ
引渡しが予定よりも遅れてしまうと、引っ越しの予約の変更や賃貸の契約の延長など、多くの影響が出てしまいます。
追加工事による追加費用の発生
図面確定後の仕様の変更は、費用が高くつきます。打ち合わせ時の記録が不足していた場合、施主側の確認不足とみなされてしまうこともあります。
しっかりと記録を残しておくことが大切です。電話など口頭での確認は避け、議事録などの書面に残す以外にも、LINEやメールなど記録に残るようにしておきましょう。
施工不良や不具合の発見
施工不良や不具合としてよくあるのが以下のようなものです。
- クロスの浮きや汚れ
- 床鳴り
- 排水の流れ不良
- 結露
引き渡し前の検査の際や見学の際に気がつける問題と、生活して初めて気が付く問題があります。気が付いた時点で、速やかに担当者に連絡しましょう。保証期間内に必ず修理依頼を行うことが大切です。
新築の引き渡し時のトラブルを回避するポイント

どんなトラブルが起こり得るのかがわかったところで、次はその回避するためのポイントについて解説していきます。
- 事前の打ち合わせを徹底する
- 重要なやり取りは文書や録音で残す
- ホームインスペクションを利用する
- 完成するまで書類にサインしない
回避するポイントについては、大きく4つです。どれも簡単にできるような基本的なことですので、是非実践してみてください。
事前の打ち合わせを徹底する
仕様書や図面を細かく理解して、メーカーの担当者などから言われたことを全て記録することで、トラブルの大半は回避することができます。
特にコンセントの位置や棚の有無は、新居での生活の利便性に直結することなので、慎重な打ち合わせが必要です。

打ち合わせの際には、とても多くの資料をもらいます。乱雑に保管していると後で確認したいときに探すのも大変。見落としも起こりやすくなるから、しっかり整理して保管しておこうね。
重要なやり取りは文書や録音で残す
電話や口頭での約束は後で食い違いが起こりやすくなります。LINEやメール、録音など、証拠を残すことが基本となります。『言った・言わない』と言った争いになれば後味もよくありません。これらのトラブルを避けるためにも必須のポイントです。

LINEの場合は、担当一人とのやり取りよりも、営業担当、設計担当、インテリアコーディネーターなど複数人とのLINEグループを作るとより良いよ。営業担当が見逃していても他の人がフォローしてくれるからね。
ホームインスペクション(住宅診断)を実施する
第三者の専門家による診断は、施主が見えない部分(断熱材、配管、構造など)をチェックしてくれます。費用は5〜10万円ほどですが、安心感は非常に大きいものです。
ホームインスペクションとは
ホームインスペクション(住宅診断)とは、建築士などの専門家が第三者的な立場で住宅の劣化状況や欠陥の有無を調査し、改修すべき箇所や時期、費用などをアドバイスするサービスです。中古住宅の売買時や新築の引き渡し前などに実施され、購入後のトラブル防止、将来のメンテナンス計画、安心して住宅取引を進めるために利用され、売主・買主双方のリスク軽減につながります。
完成するまで書類にサインしない
「工事完了確認書」は最も重要な書類の1つです。未完成の部分があるのにサインすると、後からの是正対応が遅れたり、断られたりする可能性があります。
まとめ|引き渡しはゴールではなく“スタート”
新築の引き渡しは、単なる鍵渡しのイベントではありません。家の品質を確認し、不具合を未然に防ぐための最終チェックの場となります。
- 引き渡し前の準備
- 当日の段取り
- 引き渡し後の手続き
- よくあるトラブルとその対処法
これらを全て理解、実践することで、安心して新生活をスタートさせることができるでしょう。
家づくりの成功は、引き渡しで決まると言っても過言ではありません。ぜひこの記事を何度も見返しながら、万全の状態で引き渡し当日を迎えてください。